乳がんは手術しないと治らないのか──手術が必要な理由と、例外が検討される場合

乳がんの手術を受けたくない気持ちを担当医に伝える患者と、耳を傾ける医師

この記事の要点

  • 乳がんの手術とは:乳房や近くのリンパ節にとどまっているがんを取り切るための治療で、根治を目指すうえで原則として省略できません。薬や放射線は手術の代わりではなく、手術と組み合わせて効果を発揮するものです
  • 「手術したくない」理由の多く(かたち・痛み・入院・仕事)は、手術をやめることではなく、手術の受け方を変えることで解決できます
  • 「手術をしない」が検討されるのは、高齢や重い併存疾患、遠隔転移がある場合、ガイドラインの適応を満たすラジオ波焼灼療法など、医学的に限られた特殊な場合だけです
  • 凍結療法・免疫細胞療法など「切らずに治す」と宣伝される自由診療には、乳がんを治す有効性を示す根拠がありません。受けてはいけません
  • 手術をしないまま時間が経つと、がんは皮膚を突き破る「花咲き乳がん」の状態まで進みます。ただし、その状態からでも治療は始められます

乳がんと診断されて、「手術は受けたくない」と思う方は少なくありません。外来でもこの言葉は繰り返し聞きます。乳房のかたちが変わることへの抵抗、手術や麻酔そのものへの恐怖、仕事や家族の事情──理由はさまざまですが、どれも自然な気持ちです。

そのうえで、最初に結論をお伝えします。根治を目指す乳がんの治療において、手術は原則として省略できません。 薬物療法や放射線治療は手術と組み合わせることで力を発揮するものであり、手術の代わりになるものではありません。

この記事では、なぜ手術が必要なのか、「手術したくない」という気持ちにはどんな解決の道があるのか、そして「手術をしない」という判断が医学的に検討されるのはどのような限られた場合なのかを、乳腺外科医の立場から順番に解説します。あわせて、「切らずに治す」と宣伝されている治療の実態と、手術をしないまま時間が経つと何が起こるのかについてもお話しします。

目次

なぜ乳がんの治療では手術が必要なのか

乳がんの治療には、手術・薬物療法(ホルモン療法・抗がん剤・分子標的薬)・放射線治療の3つの柱があります。このうち、乳房や近くのリンパ節にとどまっている段階のがんを「取り除く」ことができるのは手術だけです。

薬物療法は、目に見えないほど小さながん細胞が全身に散らばっている可能性に対して働きかける治療です。放射線治療は、手術のあとに残っているかもしれない微小ながん細胞を叩き、再発を減らす治療です。どちらも重要ですが、しこりとして存在しているがんを確実に体から取り去る手段としては、手術に代わるものがありません。

乳がん治療の3つの柱の図。手術が大黒柱で、薬物療法と放射線治療が両脇の柱として根治の屋根を支えている。薬や放射線は手術の代わりではない

薬で「消えた」ように見えても、手術を省略しないのはなぜか

近年は術前の薬物療法がよく効き、治療後の画像でしこりが見えなくなる方が珍しくなくなりました。とくにHER2陽性やトリプルネガティブのタイプでは、薬だけで画像上がんが消えることがあります。

それでも現在、手術を省略することは標準治療ではありません。理由は、画像で見えなくなったことと、がん細胞がゼロになったことは同じではないからです。画像には限界があり、顕微鏡でしか確認できない残存がんは、手術で組織を取って調べてはじめて分かります。「薬で消えたら手術をしなくてよいか」は世界的に研究が進められているテーマですが、現時点では研究段階であり、限られた条件の臨床試験の中でのみ検討されています。

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治すことと、乳房の整容性を守ること──どちらも手術の目的です

医師の側は「まず乳がんを根治すること、そのうえで乳房の整容性(乳房の見た目やかたち)を考える」という順番で話をします。しかし患者さんの側では、その順番が逆になっていることがあります。「乳房の整容性が守れるなら治療を受ける。守れないなら受けたくない」。この順番の違いが、診察室でのすれ違いを生みます。

乳房を失うかどうかが、治療を受けるかどうかを左右するほど大切なものだと考える方はいらっしゃいますので、その順番は否定しません。しかし、「手術をしない」という選択によって乳がんが進行してしまえば、皮膚を破り、出血し、乳房そのものの形状を大きく変えてしまうことがあります。ですから、逆説的ですが手術は乳房の整容性を守るための手段の一つであると言えます。温存手術、乳房再建、手術の方法や時期の工夫──選択肢は一つではありませんので、担当医と手術の方法を検討することが、結果的には治療と乳房の整容性を両立させるための第一歩となります。

「手術をやめる」閉じた1枚のドアと、「温存手術・乳房再建・手術時期の調整」の開いた3枚のドアを対比した図。かたち・痛み・入院・仕事の悩みはそれぞれのドアで解決できる

「手術したくない」の理由を分ける──理由ごとに、手術を受けながら解決できる道がある

「手術したくない」という言葉の中身は、人によって違います。そして、その多くは手術をやめることではなく、手術の受け方を変えることで解決できます。理由ごとに整理します。

乳房のかたちが変わるのが嫌だ

もっとも多い理由です。この場合、検討すべきは「手術をしない」ではなく、「乳房を残す手術(温存手術)ができるか」と「全摘が必要な場合に乳房再建ができるか」です。がんの大きさや広がりによっては温存手術が選べますし、全摘が必要な場合でも、同時再建や後日の再建によって乳房のふくらみを取り戻すことができます。再建は保険診療で受けられます。

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痛みや麻酔、入院が怖い

乳がんの手術は、がんの手術の中では体への負担が比較的小さい部類に入ります。お腹を開ける手術と違い、食事は手術当日か翌日からとれますし、入院期間も比較的短く済みます。術後の痛みには個人差がありますが、痛み止めでコントロールできる範囲のものがほとんどです。長引く痛みやしびれが出る場合の対処法も確立しています。

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仕事や家族の事情で、今は手術を受けられない

手術の時期は、ある程度は調整できます。数週間程度であれば、仕事の区切りや家族の予定に合わせて手術日を決めることは日常的に行われています。ただし、延ばせる幅には医学的な限度があり、それはがんのタイプと進行度によって違います。「いつまでなら待てるか」は自己判断せず、担当医と一緒に決めてください。

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まだ診断を受け入れられない

がんと告げられてすぐに手術の話をされ、心が追いつかないのは当然です。少し時間をかけて考えることは許されますし、担当医もそれを理解しています。大切なのは、時間をかけることと、判断を止めてしまうことは別だという点です。考える時間の間も、担当医とのつながりを切らないでください。伝え方については、この記事の後半でお話しします。

「手術をしない」が検討される特殊な場合

ここまでお読みいただいたうえで、それでも「手術をしない」という判断が医学的に検討される場合があります。最初にはっきりさせておきたいのは、それは医学的な判断によって限定される例外であって、「本人が希望するから」という理由だけでは成立しないということです。

高齢や重い併存疾患で、手術のリスクが利益を上回る場合

心臓や肺の病気、重い糖尿病などで全身麻酔のリスクが高い方、あるいはご高齢で体の余力が乏しい方では、手術による負担ががんを取り除く利益を上回ると判断されることがあります。この場合、ホルモン受容体陽性の乳がんであれば、手術をせずホルモン療法でがんを抑えていくという方針(一次内分泌療法)が医学的な選択肢になります。これは放置とはまったく違う、医学的根拠のある治療方針です。

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診断の時点で、すでに遠隔転移がある場合

肺や骨、肝臓などに転移がある状態で見つかった場合、治療の目標は「がんを体から取り去る」ことから「がんと長く付き合いながら生活の質を保つ」ことに変わります。この場合、主役は薬物療法になり、乳房の手術は症状を和らげる目的などで限定的に検討されるものになります。ただし、これは「手術をしなくてよい」のではなく、病気の段階が違うので治療の組み立てが変わるという話です。

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ラジオ波焼灼療法(RFA)──ガイドラインの適応を満たす早期乳がんに限られる

「切らない治療」として最近よく名前が挙がるのが、ラジオ波焼灼療法(RFA)です。針をがんに刺し、先端から出る熱でがんを焼く治療で、乳房に傷がほとんど残りません。日本では2023年12月から保険診療で受けられるようになりました。

ただし、この治療は「手術が嫌な人のための代替手段」ではありません。日本乳癌学会のガイドラインおよび保険適用の要件で、対象は次のような条件をすべて満たす早期の乳がんに限られています。

  • しこりの大きさが1.5cm以下
  • がんが1か所のみで、広がりが限られている
  • 画像・検査でリンパ節転移や遠隔転移がない
  • 術後放射線治療が実施可能である

さらに、RFAを行った場合でも、通常はセンチネルリンパ節生検と放射線治療、必要に応じた薬物療法を組み合わせます。つまり、RFAは「手術の一部を熱で置き換える局所治療」であって、「治療をしない」こととはまったく違います。条件を満たさないがんにRFAを行うと、がんが焼き残る危険があります。

「手術をしない」が検討される場合のフローチャート。本人の希望だけでは門を通れず、高齢・併存疾患ならホルモン療法、遠隔転移なら薬物療法、条件を満たす早期ならラジオ波焼灼療法、それ以外はすべて手術

3つの例外に共通すること

いずれも、「手術をしない」のではなく、「手術と同じ目的を、別の手段で達成できると医学的に判断された場合」、あるいは「病気の段階が違うため治療の目標そのものが変わる場合」です。ご本人の希望は治療方針を決めるうえで大切な要素ですが、希望だけで手術の必要性が消えることはありません。

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「切らずに治す」と宣伝されている治療について

インターネットで「乳がん 手術したくない」「切らない治療」と検索すると、ラジオ波焼灼療法と並んで、凍結療法、免疫細胞療法、免疫放射線療法などといった代替療法・民間療法の名前が出てきます。これらはすべて自由診療であり、前の節で説明したラジオ波焼灼療法とは根本的に異なります。

これらの自由診療に、乳がんを治す有効性を示す科学的根拠はありませんので、受けてはいけません。

「保険がきかない=最先端の治療」と思われる方がいますが、順序が逆です。有効性と安全性が臨床試験で証明された治療は、保険診療に組み込まれます。有効性が証明されていないから保険がきかないのです。保険診療に組み込まれた標準治療こそが、これまでの多くの研究者と患者さんの協力によって生まれた、人類の叡智を集めた最高レベルの治療法です。

自由診療の最大の害は、費用の高さではありません。標準治療を受けるべき時間を失うことです。効かない治療に数か月を費やしている間に、がんは進行します。手術で取り切れたはずのがんが、取り切れない大きさになることがあります。私たちが外来で見てきた中で、いちばん取り返しがつかないのはこのパターンです。

自由診療(凍結療法・免疫細胞療法)と保険診療の標準治療を砂時計で対比した図。自由診療の間に時間が失われしこりが大きくなる。失うのはお金より時間

なお、「セカンドオピニオンとして自由診療のクリニックに相談する」という考え方も成り立ちません。セカンドオピニオンは、標準治療を行う別の専門医に、診断と治療方針の妥当性を確認するものです。

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手術をしないまま時間が経つと何が起こるか──皮膚を突き破る「花咲き乳がん」まで

「手術をしない」「先に延ばす」「放置する」は、それぞれ別のことです。

  • 手術をしない──前の節で述べたように、医学的判断にもとづく治療方針
  • 先に延ばす──担当医と期限を決めたうえで、手術時期を調整すること
  • 放置する──治療の判断そのものを止めてしまうこと

この節でお話しするのは、3つ目の「放置」の場合に何が起こるかです。

乳がんは、自然に小さくなることがありません。がん細胞は正常な細胞と違って増え続ける性質を持っているため、時間とともにしこりは大きくなります。大きくなったしこりは乳房の中で広がり、やがて皮膚に達します。皮膚に達したがんは、皮膚を内側から押し上げて硬くし、さらに進むと皮膚を突き破って表面に顔を出します。並行して、がん細胞はリンパ管や血管を通って脇の下のリンパ節、そして肺・骨・肝臓などの遠くの臓器へと広がっていきます。

花咲き乳がん(花咲乳がん)とはどういう状態か、なぜそこまで放置されるのか

進行した乳がんが皮膚を突き破り、表面に露出して潰瘍やカリフラワーのような盛り上がりをつくった状態を、俗に「花咲き乳がん(花咲乳がん)」と呼びます。医学的には、がん性皮膚潰瘍や局所進行乳がんという言葉で表されます。露出した部分からは出血や滲出液が続き、細菌感染による悪臭や痛みを伴います。

私の外来にも、年に何人かはここまで進んでから受診される方がいらっしゃいます。経緯をうかがうと、いくつかの共通した経路があります。

  • しこりに気づいたが、がんだと言われるのが怖くて受診できなかった
  • 気づいてから時間が経ちすぎて、今さら言い出せないと感じていた
  • 自由診療や民間療法に頼っている間に進行してしまった
  • 皮膚の変化を「湿疹」や「かぶれ」だと思い込んでいた

どの経路にも共通しているのは、ご本人が「もう手遅れだ」「怒られる」と思い込んで、受診をさらに遠ざけてしまうことです。診察室でご家族が、「なんでこんなになるまで言わなかったんだ!」と患者さんを叱ることがありますが、これは逆効果です。言い出せなかった患者さんのメンタル面に配慮し、しっかりと今後の治療を受けられるよう、寄り添う姿勢をみせてあげてください。

花咲き乳がんの状態になっても、治療は始められますし、根治を目指すことも可能です。 出血や滲出液、におい、痛みに対しては、がんの治療と並行して専門的なケアがあります。慶應義塾大学病院では、創傷治癒専門の看護師や皮膚科の先生が親身に治療を行ってくださいます。ですから、「ここまで進んだから病院に行っても仕方ない」ということは、ありません。

なお、乳房が全体的に赤く腫れる「炎症性乳がん」は、放置の結果として起こるものではなく、最初からそのような性質を持つ別の病型です。皮膚の赤みや腫れが急に出てきた場合は、すぐに受診してください。

「何年もつのか」に一律の答えがない理由

「手術をしないで何年もつのか」「放置したら何年で進行するのか」という質問には、一律にお答えすることができません。乳がんの進行の速さは、がんのタイプ(サブタイプ)によって大きく異なるからです。ホルモン受容体陽性でゆっくり育つタイプもあれば、HER2陽性やトリプルネガティブのように数か月単位で大きくなるタイプもあります。同じタイプの中でも個人差があります。

そして、放置している間はご自身のがんがどのタイプなのかが分からないままです。「しこりが小さいから、まだ大丈夫」という判断は、進行の速いタイプであれば成り立ちません。時間の見通しを立てるためにも、まず検査を受けてタイプを知ることが出発点です。

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手術をしたくない気持ちを担当医にどう伝えるか

手術を受けたくないという気持ちは、担当医に隠す必要はありません。むしろ、伝えていただいたほうが、より良い方法を一緒に考えることができます。伝えるときのポイントを3つ挙げます。

「どこが一番嫌か」を具体的に伝える

「手術は嫌です」だけでは、担当医は何を解決すればよいのか分かりません。「胸のかたちが変わるのが嫌」「麻酔が怖い」「入院で仕事を休めない」──一番大きな理由を具体的に伝えていただければ、先ほどお話ししたように、それぞれに対応する方法を提案できます。

手術を延ばしたい場合は「いつまでなら待てるか」を一緒に決める

事情があって今すぐ手術を受けられない場合は、その事情を伝えたうえで、「医学的にいつまでなら延ばせるか」を担当医と決めてください。がんのタイプと進行度から、担当医は許容できる期間の目安を示すことができます。自分で決めた期限ではなく、医学的な期限を共有しておくことが大切です。

「手術をしない」「先に延ばす」「放置する」は別のことを示す3枚のカード。手術をしないは医学的判断で決まり、先に延ばすは担当医と期限を決め、放置するは判断を止めること

納得できなければセカンドオピニオンを

担当医の説明に納得できない場合は、セカンドオピニオンを受けることができます。ただし、その目的は「手術を回避する方法を探すこと」ではなく、「手術の必要性と方法が妥当かどうかを、別の専門医に確認すること」です。標準治療を行う乳腺専門医に相談してください。

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よくある質問

Q. 乳がんの手術をしたくないのですが、どうすればいいですか?
A. まず、「手術のどこが嫌なのか」を担当医に具体的に伝えてください。乳房のかたち・痛み・入院・仕事など、理由の多くは手術をやめることではなく、温存手術・乳房再建・手術時期の調整などで解決できます。根治を目指す治療で手術を省略できるのは、医学的に限られた特殊な場合だけです。

Q. 乳がんを手術しないとどうなりますか?
A. 乳がんは自然に小さくなることがなく、時間とともにしこりは大きくなります。乳房の中で広がったがんはやがて皮膚に達して突き破り(花咲き乳がん)、同時にリンパ節や肺・骨・肝臓などへ転移していきます。進行の速さはがんのタイプによって大きく異なるため、「何年もつか」を一律に答えることはできません。

Q. 全摘はしたくないのですが、温存手術はどうすれば選べますか?
A. 温存手術ができるかどうかは、がんの大きさ・広がり・乳房の大きさとのバランスで決まります。しこりが大きい場合でも、術前に薬物療法でがんを小さくしてから温存手術を行える場合があります。担当医に「温存の可能性」を直接聞いてみてください。全摘が必要な場合も、乳房再建で乳房のふくらみを取り戻すことができます。

Q. ラジオ波焼灼療法(RFA)は誰でも受けられますか?
A. 受けられません。RFAは、日本乳癌学会のガイドラインと保険適用の要件で定められた条件(しこりの大きさ・数・リンパ節転移の有無など)をすべて満たす早期の乳がんに限って行われる治療です。条件を満たさないがんにRFAを行うと、がんが焼き残る危険があります。また、RFAを行った場合も、センチネルリンパ節生検や放射線治療などを組み合わせるのが標準的です。

Q. 免疫細胞療法や凍結療法で乳がんは治りますか?
A. 治りません。これらの自由診療には、乳がんを治す有効性を示す科学的根拠がありません。有効性が証明されていないからこそ保険診療になっていないのであり、「保険がきかないから最先端」ではありません。最大の害は、効かない治療に時間を費やす間にがんが進行し、標準治療で治る機会を失うことです。

Q. 手術を数か月遅らせるとどうなりますか?
A. がんのタイプによって答えが変わります。ゆっくり育つタイプであれば数週間程度の調整は日常的に行われていますが、進行の速いタイプでは数か月の遅れが治療の結果に影響することがあります。「いつまでなら医学的に待てるか」を必ず担当医と決めてください。

Q. 花咲き乳がんはなぜ放置されるのですか?
A. 多くは、がんだと言われるのが怖くて受診できなかった、時間が経ちすぎて言い出せなくなった、自由診療や民間療法に頼っている間に進行した、皮膚の変化を湿疹だと思い込んでいた、という経路です。共通しているのは「もう手遅れだ」「怒られる」という思い込みが受診をさらに遠ざけてしまうことです。

Q. 花咲き乳がんになっても治療できますか?
A. できます。薬物療法でがんを縮小させ、皮膚の状態を改善させてから手術に進める方はいらっしゃいます。出血・滲出液・におい・痛みに対する専門的なケアも、がんの治療と並行して行います。「ここまで進んだから病院に行っても仕方ない」ということはありません。

まとめ

  • 乳房や近くのリンパ節にとどまっている乳がんを治すためには、手術でがんを取り切ることが原則として欠かせません
  • 「手術したくない」理由の多くは、手術の受け方を変えること(温存・再建・時期調整)で解決できます
  • 「手術をしない」が検討されるのは、高齢・併存疾患、遠隔転移、ガイドラインの適応を満たすRFAなど、医学的に限られた特殊な場合だけです
  • 「切らずに治す」と宣伝される自由診療には根拠がなく、受けてはいけません。失うのはお金より時間です
  • 放置の先には花咲き乳がんがあります。ただし、その状態からでも治療は始められます

手術を受けたくないという気持ちを、どうか担当医に伝えてください。責められることはありません。その気持ちを出発点に、納得できる治療の形を一緒に探すことが、私たちの仕事です。

参考文献・出典
  1. 日本乳癌学会『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版』 jbcs.xsrv.jp
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」 ganjoho.jp

※ 本記事は上記の公的機関・学会等の情報をもとに、慶應義塾大学医学部 乳腺外科 林田哲 教授が監修しています。最終確認:2026-09-18

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