乳がんの生検とは──針生検・細胞診の違いと結果の見方を専門医が解説

この記事の要点

  • 乳がんの生検とは:乳房の組織を採取してがん細胞の有無を調べ、乳がんを確定診断する検査です
  • 画像検査で疑わしい所見があっても、良性か悪性かを最終的に確かめられるのは生検だけです
  • 細胞診・針生検・吸引式生検・外科的生検があり、現在は組織を多く採れる針生検・吸引式が中心です
  • 多くは局所麻酔での日帰り検査。結果は良悪性で約1週間、サブタイプまで含めると約2週間が目安です

マンモグラフィや超音波検査で「気になる所見がある」と言われても、それだけで乳がんと決まるわけではありません。画像でわかるのはあくまで「疑わしい影」であり、乳がんかどうかを最終的に確かめられるのは乳がんの生検という検査だけです。

乳がんの生検は、乳房の組織を少量採取して、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査です。名前の響きに不安を感じる方は少なくありませんが、多くは日帰りででき、手術を必要としないものが主流です。この記事では、生検が必要になる場面、検査の種類、当日の流れ、結果の読み方までを、順を追って解説します。

目次

なぜ乳がんの生検が必要なのか

乳がんは、多くの場合、乳房の中の乳管(母乳の通り道)や小葉(母乳をつくる小さな房)の細胞から発生します。マンモグラフィ・超音波・MRIといった画像検査は、こうした部分にできた「しこり」や「石灰化」などの手がかりを映し出しますが、それが良性か悪性かを画像だけで100%断定することはできません。もしも診断が間違っていて、乳房全摘を行ったら乳がんが存在しなかった、なんてことになれば一大事ですよね。

そこで、実際に組織を採って調べる生検が必要になります。次のような場合に、担当医が生検をすすめることがあります。

  • マンモグラフィ・乳房超音波・MRIで、精密検査が必要な所見が見つかった
  • 乳房にしこりや皮膚の引きつれ・肥厚などの変化がある
  • 乳頭の陥没や、血性の分泌物などの変化がある

生検は「乳がんを見つけるため」だけでなく、良性であることを確認して不要な不安や治療を避けるといった趣旨でも行われます。

乳がんの生検の種類

生検にはいくつかの方法があり、しこりの大きさや性状、石灰化の有無、画像検査の結果、全身の状態などをもとに、担当医が適した方法を選びます。日本で行われる主なものは次のとおりです。

穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん/FNA)

注射器の先につけた細い針を刺し、細胞や液体を吸い取って調べる方法です。針が細く、体への負担が小さいのが特長で、短時間で終わります。ただし採れる量が少ないため、この結果だけでは診断が確定せず、またサブタイプも判明しないため、後述の針生検が追加されることがほとんどです。よって、大きな病院ではこの検査は行わない傾向にあります。一方で短時間ででき、簡便で侵襲も少ないため、クリニックなどで専門病院へ送るかどうかの判定などに使用されることがあります。

針生検(コア針生検)

細胞診より太い針を使い、組織をまとまった形で採取する方法です。細胞診より多くの組織が採れるため診断の精度が高く、手術を必要としません。免疫染色も可能で、サブタイプ診断にも適しています。超音波・マンモグラフィなどの画像で位置を確認しながら、正確に狙って採取します。

吸引式乳房組織生検(バコラ・マンモトーム生検など)

吸引の力を利用して、コア針生検よりさらに多くの組織を一度に採取できる方法です。しっかりと組織を採取することができ、ほとんどの場合、免疫染色などによりサブタイプも同時に診断することが可能です。現在、乳がんの生検で最も使用されている中心的な方法です。

外科的生検(切除生検)

手術室で局所麻酔などを行い、皮膚を切開して直接疑わしい病変の一部の組織を採る方法です。前述の針生検で診断がつかない場合などに限って行われ、最初からこれを行うことはほとんどないと考えて良いです。

検査前の準備

生検を控えて不安になるのは自然なことです。あらかじめ流れを知っておくと、落ち着いて臨みやすくなります。準備として確認しておきたい点をまとめます。

  • 服装:上半身のみ脱衣して、タオルをかけたり、検査着に着替えます。当日は画像検査を伴うことが多いため、着脱しやすいゆったりした服が安心です。アクセサリー類は外します。
  • 飲食:針を使う生検は、通常どおり食事をしてかまいません。麻酔・鎮静を伴う外科的生検では、絶食が必要になることがありますので、事前の指示に従ってください。
  • :血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬など)を服用している場合、出血を抑えるために一時中止を指示されることがあります。自己判断で中止せず、必ず担当医に申し出てください。
  • 付き添い・帰宅手段:多くは日帰りですが、外科的生検を受ける場合は、1泊入院などで行うこともあります。
  • 持ち物:保険証・診察券・事前に渡された書類などを持参します。

所要時間の目安は、細胞診が15分程度、針生検が15〜30分程度、外科的生検では場合によりますが、準備から終了まで概ね30分〜1時間前後と考えておけば良いでしょう。

当日の流れ

いずれの生検でも、まず採取する部分に局所麻酔をして痛みを抑えます。採取した組織は検査室に送られ、病理医(顕微鏡で病気を診断する専門の医師)が調べます。

検査中

  • 細胞診:疑わしい部分に針を刺し、注射器で細胞や液体を吸引します。針を抜いて絆創膏を貼って終了です。
  • 針生検・吸引式生検:画像で位置を確認しながら針を進め、1〜数個の組織を採取します。採取後、後日のマンモグラフィや超音波検査で場所がわかるよう、目印となる小さなマーカー(クリップ)を留置することがあります。体内に残りますが、痛みや違和感を感じることはほとんどありません。最後に圧迫して止血し、絆創膏で覆います。
  • 外科的生検:皮膚を切開して病変を摘出し、縫合して絆創膏で覆います。

検査後

  • 多くの場合、検査後はその日のうちに帰宅できます。外科的生検の後は、無理をせず送迎してもらいましょう。
  • 生検後1〜2日は、採取した側の腕や胸に負担のかかる激しい運動を控えます。外科的生検の場合は、もう少し長めに安静を保ちます。

リスクと注意点

乳がんの生検は安全性の高い検査ですが、体に針や切開を加える以上、次のようなことが起こる可能性があります。

  • 出血
  • 内出血(あざ)や痛み
  • 感染(発赤・痛み・膿など)
  • 腫れ

多くは数日で落ち着きますが、発熱を伴う強い痛みや発赤、膿、止まらない出血、乳房の強い腫れなどがあれば、我慢せず早めに医療機関へ連絡してください。

病理レポートの読み方──ER・HER2・Ki-67検査結果を受け取ったら病理レポートの読み方──ER・HER2・Ki-67

結果の見方

結果が出るまでの期間は方法によって異なり、針生検や外科的生検では、良悪性の判定では1週間程度かかるのが一般的です。サブタイプの結果まであわせると、検査から2週間前後かかることが多いです。

なお、乳がんと診断された場合でも、生検でわかった性質やサブタイプ(ホルモン受容体・HER2・Ki-67など)によって治療は大きく変わります。結果は担当医と一緒に確認し、疑問はその場で質問することが大切です。

よくある質問

Q. 生検は痛いですか?

局所麻酔をするため、採取時の強い痛みは抑えられます。麻酔の注射時にチクッとした痛みを感じることはあります。検査後に鈍い痛みや張りが残ることがありますが、多くは市販の鎮痛薬で対応できる程度です。

Q. 生検でがん細胞が広がってしまうことはありませんか?

針生検などでがんが広がる(播種する)ことは、臨床的にほとんど問題にならないと考えられています。診断を確定して適切な治療を早く始めることの利益のほうが、はるかに大きい検査です。

Q. 結果が出るまで、どう過ごせばよいですか?

結果を待つ間は不安が強くなりがちです。信頼できる家族や友人に気持ちを話す、担当医に遠慮なく質問するなど、一人で抱え込まないことが助けになります。

まとめ

乳がんの生検は、乳房の組織を採取して乳がんかどうかを確かめる検査で、診断を確定できる唯一の方法です。針を使う日帰りの方法が主流で、体への負担は以前より大きく軽減されています。

検査の前に不安を感じるのは、決して特別なことではありません。流れを知り、疑問を担当医に相談し、周囲のサポートを得ながら臨んでいただければと思います。

参考文献・出典
  1. 日本乳癌学会『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版』 jbcs.xsrv.jp
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 検査」 ganjoho.jp

※ 本記事は上記の公的機関・学会等の情報をもとに、慶應義塾大学医学部 乳腺外科 林田哲 教授が監修しています。最終確認:2026-07-10

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