この記事の要点
- 超音波検査とは:プローブという器具を乳房に当て、音の波の跳ね返りを画像にする検査です。放射線を使わず被ばくの心配がなく、痛みもほとんどありません。検査時間は両側で15〜20分ほどが一般的です
- 乳腺組織の多さの影響を受けにくいため、高濃度乳房や乳腺が多い若い方でもしこりを見つけやすく、液体がたまった嚢胞と固いしこりの見分けや、生検の案内役としても使われます
- 一方で、非浸潤性乳管がんの初期サインである微小石灰化を見つけるのは苦手で、検査をする人の技術によって結果に差が出やすいという弱点があります
- 20〜30代や40代前半は高濃度乳房が多く超音波が向きやすく、50代以降は乳腺が脂肪に置きかわりマンモグラフィーの力が発揮されやすいなど、向いている検査は年齢によって変わります
これまで、マンモグラフィーが乳がん検査の中でどのような役割を持っているのか、そしてどのような弱点があるのかをお伝えしてきました。X線を使って乳房をはさんで撮影する検査ですが、特に乳房の中の組織が多い方では、見落としの可能性があることをご説明しました。
超音波検査の強みと、その利点
では、超音波検査について見ていきましょう。この検査のいちばん大きな強みは、先ほどマンモグラフィーの弱点としてお話しした高濃度乳房乳房の中に乳腺組織が多く、脂肪が少ない状態のことです。この場合、マンモグラフィーではがんが見つけにくくなることがあるため、超音波検査を組み合わせることが有効です。でも、しこりを見つけやすいことです。超音波はX線とは違い、乳腺組織乳房を構成する組織の一部で、乳汁を作る腺と乳管からなります。この組織が多いほど、マンモグラフィーではがんが見つけにくくなります。の多さの影響を受けにくいため、乳腺が多い若い方の乳房でも、しこりをしっかり見つけやすいのです。マンモグラフィーでは背景の白さにまぎれてしまうような部分も、超音波なら見つけやすく、弱点をうまく補ってくれます。
放射線を使わないことも大きなよい点です。被ばくX線やその他の放射線に露出することです。超音波検査は放射線を使わないため、妊娠中の方や何度も検査を受ける必要がある場合に安全です。の心配がないため、妊娠中でも安全に行うことができますし、短い間隔で何度も検査を受けることにも制限がありません。何か気になる所見があったときに、あとから何度か確かめる検査として使いやすいのは、実際の診療でもとても心強いところです。
痛みがほとんどないことも、患者さんにとってはうれしい点ではないでしょうか。ゼリーを乳房の表面にぬり、プローブ超音波検査で使う器具で、ゼリーを塗った乳房の上を滑らせて画像を映し出します。痛みがほとんどなく、圧迫することもありません。という器具を軽く当ててすべらせるだけなので、マンモグラフィーのようにはさまれるつらさはありません。検査時間は両側で15〜20分ほどが一般的ですが、丁寧に調べる場合にはもう少しかかることもあります。
超音波にはもう一つ、その場で見ながら判断できるという特長があります。検査をしているその瞬間に画像を確認できるため、「この部分をもう少し詳しく見たい」と思えば、その場でプローブの角度を変えたり、ドプラ機能超音波検査で、しこりの中に血液が流れているかどうかを調べる機能です。血流が多いと悪性の可能性が高まることがあります。を使って血液の流れがあるかどうかを調べたりできます。検査をする人の技術が結果に出やすい検査ではありますが、経験のある医師や検査技師が行えば、しこりが良性か悪性かを考えるうえでかなり高い精度が期待できます。嚢胞乳房の中に液体がたまってできた袋状のもので、ほとんどの場合は良性です。超音波検査が特に得意とする診断で、固いしこりとの見分けが大切です。(液体がたまった袋)と充実性腫瘤乳房内の固いしこりのことです。液体がたまった嚢胞とは異なり、より詳しい検査が必要になる場合があります。(固いしこり)の見分けは、超音波が特に得意とするところです。マンモグラフィーで見つかった影が、本当にしこりなのか、それとも嚢胞なのかを確かめるために超音波を追加することは、日常の診療でよくあります。
さらに、超音波は針を刺して組織を取る生検疑わしい部分から針や器具を使って組織の一部を取り出し、良性か悪性かを調べる検査です。診断を確定するために重要な検査です。(せいけん)の案内役としても使われます。超音波の画像でしこりの場所を確認しながら針を正確に進められるため、患者さんの負担を少なくしながら、正確に組織を取ることができます。このように超音波は、検診だけでなく、くわしい検査の場面でも欠かせない大切な道具として使われています。

超音波検査にも苦手なことがあります
ここまで超音波のよい点をいくつもお伝えしましたが、この検査にも苦手なことがあります。
いちばん苦手なことは、とても小さな石灰化を見つけるのが難しいことです。マンモグラフィーのところでお話ししたように、非浸潤性乳管がん乳管内にとどまっており、周囲の組織に広がっていない初期段階のがんです。超音波では見落としやすく、マンモグラフィーで微小石灰化として見つかることが多いです。の初期のサインである微小石灰化乳房内の非常に小さな石灰化のことで、がんの初期段階のサインになることがあります。マンモグラフィーが最も得意とする発見目標です。は、超音波では見落としやすいことが知られています。つまり、超音波検査だけでは、しこりになっていないごく早い段階のがんを見つける力が弱いのです。これはマンモグラフィーが最も得意とする部分ですから、超音波だけで十分とは言いきれない理由のひとつです。
もう一つの課題は、検査をする人の技術によって結果に差が出ることがある点です。マンモグラフィーは撮影した画像をあとから複数の医師で確認できますが、超音波はその場で行う検査なので、どこをどのように見たかによって結果が変わることがあります。もちろん画像を残すことはできますが、すべての断面を保存するわけではないため、検査をする人の経験や集中力が結果に大きく関わりやすい検査です。検診として多くの人に行う場合には、正確さをそろえるという点で、マンモグラフィーより難しいところがあるとされています。
また、超音波検査では良性のしこりがたくさん見つかることがあり、その結果として本当は必要のないくわしい検査につながることがあります。これを「偽陽性検査で異常があるように見えたのに、実際には良性で問題のない状態のことです。不要な追加検査につながる可能性があります。」といいます。特に若い方の乳房には、線維腺腫特に若い女性に見られる良性のしこりです。悪性ではありませんが、超音波検査だけでは良性と確定しにくいことがあります。(せんいせんしゅ)という良性のしこりがよく見られますが、超音波だけでは良性か悪性かをはっきり決められないこともあり、「念のため」に針生検をすすめられることがあります。もちろん安全を大切にするための判断ですが、最終的に良性だったとわかったときでも、心や体への負担は小さくありません。

どちらを受けるか迷ったら
超音波検査は高濃度乳房や若い方の乳房でしこりを見つけるのが得意な一方、ごく小さな石灰化を見つけるのはマンモグラフィーが得意です。ご自身の年齢や乳腺の状態にどちらが向いているか、両方を組み合わせるべきかは、次の記事で年齢・乳腺タイプ別に整理しています。
検査選びで迷ったらマンモグラフィーと超音波、どっちを受ける?年齢・乳腺タイプ別の選び方→- 日本乳癌学会『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版』 jbcs.xsrv.jp
- 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 検査」 ganjoho.jp
※ 本記事は上記の公的機関・学会等の情報をもとに、慶應義塾大学医学部 乳腺外科 林田哲 教授が監修しています。最終確認:2026-07-27















