乳がんの手術後、仕事復帰はいつから?──休む期間の目安を仕事の種類別に専門医が解説

この記事の要点

  • 復帰の時期は、手術の大きさ仕事で使う体力・腕の動きの2つの要素で決まります
  • 目安はデスクワークで術後2週間ほど、立ち仕事・力仕事はもう少し余裕をみます。乳房再建では回復に時間がかかり、方法によっては1か月ほどみておくと安心です
  • ドレーン(排液管)が入っている間や、わきのリンパ節を取った後は、腕の動きが戻るのを待ちます
  • 乳房再建はエキスパンダー・インプラント・自家組織で復帰時期が異なり、自家組織が最も時間を要します
  • 抗がん剤・放射線を続けながら働く場合は、時短・在宅・通院日調整で体調の波に合わせます

乳がんの手術後にいつ仕事へ戻れるかは、受けた手術の大きさ(≒ 身体への負担の大きさ)と、デスクワークか立ち仕事かといった仕事の内容の、二つの要素で決まります。この記事では、手術の種類・再建の方法・仕事の内容ごとに、復帰時期の目安を整理します。数値はあくまで一般的な目安であり、病院ごと、医師ごとにバリエーションがありますので、実際は必ず主治医とご相談のうえで決めてください。

目次

復帰の時期を決める二つの要素

体の回復スピードは手術の大きさとそれによる身体への負担のかかり方に依存しています。傷の感染の有無、ドレーン(創部にたまる浸出液を体外に出す管)が入っている期間、わきのリンパ節を取ったかどうか、乳房再建を行ったかどうか——これらが実際の回復期間を左右します。そのうえで、デスクワークか立ち仕事か力仕事かによって、仕事への復帰時期が変わってきます。まずは自分の手術がどれにあたるかを確認しましょう。

手術別の回復・復帰の目安

乳房温存手術

乳房の一部のみを取り除く温存手術は、体への負担が比較的小さく、傷も小さめです。多くはドレーン(排液管)を入れずに済むか、早期に抜けます。術後2-3日で退院するケースが多く、デスクワークなら術後2週間ほどで復帰が可能であるとお話しています。痛みがあまりなければ日常生活の制限も少なくなります。

全摘術(乳房切除術 : 乳頭乳輪温存を含む)

乳房全体を切除する手術は傷が大きく、皮膚の下に浸出液がたまりやすいため、ドレーンが数日から1週間ほど入ることがあります。しかしながら乳房温存術に比べて、特に身体への負担が大きいというわけではありません。そのため、仕事がデスクワークならば温存術と同様に術後2週間前後での復帰を推奨しており、立ち仕事や身体を動かすのであれば、もう少し余裕をみてくださいとアドバイスを行うのが一般的です。

胸や腕を大きく動かす動作は、傷の状態を見ながら少しずつ再開します。ただし、退院後に皮下にリンパ液が貯まることがあり、これを定期的に穿刺・吸引するために、術直後は週に1-2回外来通院が必要になる場合があります。この期間中も感染や痛みが強くなければ、働くことは可能です。

腋窩リンパ節郭清をした場合

わきのリンパ節をまとめて取る郭清を行うと、ドレーンがほぼ必ず挿入され、4-7日間で抜去することが多いです。また、手術を行った側の腕の上げにくさ、しびれ、リンパ浮腫のリスクが加わりますので、腕に負担のかかる作業を急ぐと、腫れや痛みの原因になります。可動域を戻すリハビリを行いながら、腕を使う仕事は慎重に再開しましょう。
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乳房再建をした場合の復帰の目安

乳房再建をがんの手術と同時に行う一次再建の場合は、その再建方法によって復帰の時期が変わります。再建した部位が安定するまでは、胸に力の入る動作を避けることが共通の注意点です。

インプラント・エキスパンダー挿入時

再建方法には、最初からシリコンインプラントを挿入する方法と、一旦は組織拡張器(エキスパンダー)を入れ、外来で少しずつ生理食塩水を注入して皮膚を伸ばしてから、インプラントを挿入する方法があります。現在はできあがりの乳房の形状がきれいになるため、後者を行う施設が多くなっています。

どちらの方法も、乳房切除術と同時に行う一次再建を行った場合は、病院によっても異なりますが、2週間から長いと3週間程度の入院期間になるケースがあります。再建を行わない通常の手術と比べて、術後に痛みを強く感じる患者さんが一般的には多く、日常生活への復帰には時間がかかります。そのため、本調子に回復して仕事に復帰するまで、1ヶ月程度かかることを事前にお話しています。

エキスパンダーは3ヶ月から半年くらいかけて生理食塩水を注入し、拡張を行いますが、その間は胸の張りや違和感を感じるケースがあります。また、挿入したエキスパンダーが頭側にずれるのを防ぐために、重い物を持つ作業や腕を大きく動かす動作は控えていただくことが多いです。

エキスパンダーからインプラントへの入れ替え

皮膚が十分に伸びたら、エキスパンダーからインプラント(人工乳房)へ入れ替えます。この手術は最初の手術より負担が小さく、デスクワークなら術後1-2週間前後で戻られる方が多いです。ただし、これも挿入したインプラントの位置がずれないように、胸の筋肉を使う動作や重い荷物を持つ作業は、数週間ほど避けましょう。

自家組織再建

おなかや背中の自分の組織を胸へ移す自家組織再建は、胸と、組織を採取した部位の2か所に傷ができるため、最も回復に時間がかかります。デスクワークで術後3〜4週間以上、立ち仕事や力仕事はさらに余裕が必要です。特におなかの組織を使った再建では、腹部に力の入る動作や重い物を持つことを、しばらく控える必要があります。

この自家組織再建はもともとの乳房の大きさや組織の採取場所などによるバリエーションが多く、乳腺外科医のみならず形成外科医に事前に就労について詳細を聞いておくことをお勧めします。

仕事の種類別の考え方

同じ手術でも、仕事の内容によって戻せる時期は変わります。デスクワークや在宅の仕事は最も早く戻りやすく、時短勤務や慣らし勤務から始めるのがおすすめです。立ち仕事・接客・保育や介護など体を動かす仕事は、体力と傷の回復を待ちましょう。力仕事や重い物を扱う仕事、腕を高く上げ続ける作業は、傷や再建した部位が安定してから、無理のない範囲で再開します。

治療を続けながら働くとき

手術後に抗がん剤や放射線治療が続く方も少なくありません。抗がん剤は3週間前後の周期で行われることが多く、投与直後に体調が落ちやすく、次の投与前に回復するという波があります。この波に合わせ、体調のよい時期に仕事を寄せる工夫が有効です。放射線治療は平日毎日、数週間の通院が必要になるため、通院時間を確保できる働き方を考えます。時短勤務・在宅・通院日の調整を組み合わせ、長く続けられるペースを保ちましょう。

段階的に戻ることが長続きのコツ

仕事の状況が許せば、はじめから元どおりのフルタイムに戻る必要はありません。慣らし勤務や時短から始め、体調を見ながら少しずつ勤務時間や業務量を増やしていくと、無理なく仕事を再開することが可能です。強い疲れが抜けない、胸やわきの創部が痛む、腕が上がりにくいといったサインがあるときは、ペースを落とし、主治医に相談してください。

復帰前に確認しておきたいこと

復帰前には、主治医に診断書を書いてもらい、いつから職務復帰が可能であるかを文書として勤務先に提出し、これをもとに復帰時期を相談しておくと安心です。また産業医との面談は、長期的に体に合った働き方を調整するのに役立ちます。利用できる制度や手続き、職場への具体的な伝え方は、それぞれ別の記事で詳しく解説しています。

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よくある質問

Q. 何日くらい休めばよいですか?
A. デスクワークで2週間ほど、立ち仕事・力仕事や再建を伴う場合はさらに時間がかかり、1か月ほどみておくと安心です。回復には個人差があり、体調に合わせて調整してください。

Q. 力仕事はいつから戻せますか?
A. 傷や再建した部位が安定し、腕の動きが戻ってからにしましょう。リンパ節郭清や自家組織再建をした方は特に慎重に、必ず主治医にご確認ください。

Q. 診断書はもらえますか?
A. 主治医に依頼すれば作成してもらえます。休職や時短勤務、傷病手当金の申請にも必要になることが多いので、早めに相談しておくと安心です。

まとめ

仕事復帰の時期は、手術の種類・再建の方法・仕事の内容によって、一人ひとり異なります。焦らず、体の回復に合わせて段階的に戻ることが、その後も長く働き続けるための近道です。時期に迷ったときは、自己判断せず、必ず主治医にご相談ください。

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