ケモブレインの正体――化学療法が脳に何をしているのか、最新の研究でわかってきたこと

こころのケア

ケモブレインの正体――化学療法が脳に何をしているのか、最新の研究でわかってきたこと

「ケモブレイン」研究の始まりは、患者さんの声だった

1990年代のこと、化学療法がん細胞を殺すために使われる薬を点滴や飲み薬で全身に投与する治療法です。抗がん剤治療とも呼ばれます。を終えた乳がんの患者さんたちが、口をそろえて訴えていた症状がありました。「治療が終わったのに、頭にずっと霧がかかっているような感じが取れない」「以前は同時にいくつもこなせた仕事が、一つずつしか処理できなくなった」。当時、こうした訴えは医療者の間でもあまり深刻に受け止められていませんでした。がんそのものによる気疲れや、治療後のストレスのせいだろうと考えられていたのです。

ところが2000年代に入り、脳の画像を調べる技術や、記憶力・注意力を測る検査が進歩するなかで、化学療法後の患者さんの脳には、目に見える形で確認できる変化が生じていることが少しずつわかってきました。脳の「白質脳の中で神経同士をつなぐ信号が通る部分です。神経の線維が集まった道のようなもので、脳内の情報伝達に重要な役割を果たしています。」(神経の線維が通る道)に変化が見られるという報告が相次ぎ、この分野の研究に一気に火がつきました。それから20年以上の積み重ねを経て、いまではケモブレインは「気のせい」などではなく、いくつかの仕組みが重なり合って脳に影響した結果だと理解されるようになっています。

たとえば、こんな経験に心当たりはないでしょうか。よく知っているはずの人の名前が、ひと呼吸おかないと出てこない。買い物に出かけたのに、何を買うつもりだったか思い出せない。料理をしていると、手順が以前よりこんがらがる。本を読んでも、内容がなかなか頭に入ってこない――。「これまでの自分なら、こうではなかったのに」という、この感覚こそが、ケモブレインの代表的なあらわれです。

どのくらいの方に起こるのかというと、研究によって数字に幅はありますが、化学療法を受けた方のおおよそ3割から4割に、何らかの頭のはたらきの変化が見られるとする報告が多く、治療直後にはさらに高い割合になることもあります。決して「特別な人にだけ起こる、まれなこと」ではありません。多くの方が経験する、ごくありふれた変化なのです。

この記事では、化学療法がなぜ脳に影響するのか、その仕組みから、「検査では異常なし」と言われたときの考え方、そして最新の研究でわかってきた対処法まで、現在までにわかっている知見を正確ににお伝えしたいと思います。

化学療法が脳に影響を及ぼす「五つの道すじ」

「抗がん剤は脳には届かないはず」と思っていらっしゃる方も多いかもしれません。たしかに、脳には血液脳関門脳を守るための関所のような仕組みで、有害な物質が脳に入るのを防ぎます。ただし、すべての物質を止めるわけではなく、一部の薬は通り抜けることができます。という関所のような仕組みがあり、多くの物質はそこを通り抜けられません。しかし、化学療法が頭のはたらきに影響する道すじは一つではなく、いまの研究では少なくとも五つあると考えられています。

なお、ここから先は少し専門的な話になります。仕組みの細かいところが難しく感じられたら、この章は読み飛ばして、次の「たしかな証拠」の章に進んでいただいても大丈夫です。

一つめは、薬そのものが神経にあたえる影響です。 すべての抗がん剤が脳に届くわけではありませんが、「タキサン系特定の種類の抗がん剤で、細胞の分裂を止めることでがん細胞を殺す効果があります。この薬は脳関門を通り抜けやすい性質を持っています。」と呼ばれる種類の薬は、先ほどの関所をすり抜けて脳に届きうることが確認されています。これが、使う薬の種類によってケモブレインの出方が違ってくる一因として注目されています。

二つめは、体の炎症が脳に伝わる道すじです。 これは近年とくに重視されている仕組みです。化学療法は体の中で強い炎症反応を引き起こし、炎症を伝える物質(炎症性サイトカイン体に炎症が起きたときに増える物質で、免疫細胞同士の情報伝達に使われます。この物質が脳に影響を与えることがケモブレインの一因と考えられています。と呼ばれます) が血液中に増えます。これらの物質は、たとえ脳の中に直接入り込まなくても、脳を守っている免疫細胞(ミクログリア脳の中にいる免疫細胞で、脳を守り、ゴミのようになった細胞を片付ける役割をしています。ケモブレインの発症に関わることが注目されています。)を刺激して、脳の中に「神経炎症脳の中に起きる軽い炎症状態です。がんの治療によって血液中の炎症物質が増え、脳の免疫細胞が刺激されることで起こると考えられています。」と呼ばれる軽い炎症状態を引き起こすことがわかってきました。実際の研究でも、こうした炎症を伝える物質が血液中で強く増えた方ほど、注意力や、物事を素早く処理する力の低下が大きいという関係が報告されています。この神経炎症こそ、記憶や集中をつかさどる神経の働きを一時的に鈍らせる、大きな要因だと考えられています。

三つめは、酸化ストレスです。 化学療法はがん細胞を攻撃すると同時に、体の中に「活性酸素化学療法によって体内に増える物質で、細胞をさびつかせるように傷つけてしまいます。この酸化ストレスも脳の神経細胞に悪影響を与える一因です。」を多く発生させます。この活性酸素が、神経の細胞をさびつかせるように傷つけてしまうのです。あわせて、化学療法によって先ほどの関所(血液脳関門)のはたらきがゆるみ、ふだんは脳に入らない物質が通りやすくなる、という報告もあります。

四つめは、ホルモンの変化です。 乳がんの化学療法は、しばしば卵巣のはたらきを抑え、女性ホルモン(エストロゲン女性ホルモンの一種で、脳の神経を守るはたらきに関わっています。乳がんの治療で卵巣の機能が落ちると急に減り、脳の働きに影響することがあります。)を急に減らします。エストロゲンは、実は脳の神経を守るはたらきにも関わっているホルモンです。その急な減少が、頭のはたらきに影響することがあると考えられています。

五つめは、これらが重なり合うことです。 ここまでの道すじは、別々に起きるわけではありません。薬の影響、炎症、酸化ストレス、ホルモンの変化が、互いに重なり、影響し合って生じている――ケモブレインを「一つの原因」で説明できないのは、このためです。これが現在の理解です。

脳の画像と血液の検査が示す「たしかな証拠」

こうした仕組みが本当に起きていることは、脳の画像研究によっても裏づけられています。化学療法後の患者さんの脳を特殊なMRI強い磁力を使って脳や体の中を詳しく撮影する検査方法です。痛みはなく、放射線を使いません。ケモブレインの研究では脳の細かい変化をとらえるのに使われています。でていねいに調べると、神経の線維の束に、ごくわずかな変化が見つかります。これは水分子の動きを手がかりに神経の「通り道」の質を見る方法で捉えられるもので、線維の通り道がほんの少し変化していることを示しています。また、注意力や処理速度、記憶に関わる脳の領域どうしの連携(ネットワーク)が、治療前と比べて変わっていることも報告されています。

さらに近年注目されているのが、血液で測れる神経のダメージの目印です。これは正式には「神経フィラメント軽鎖(NfL)神経が傷つくと血液中ににじみ出てくるたんぱく質です。血液検査で測ることで、脳や神経がどの程度ダメージを受けているかを知ることができます。」と呼ばれるたんぱく質で、神経が傷ついたときに血液中ににじみ出てきます。化学療法を受けた患者さんでは、治療開始からおよそ3か月でこの目印がいちばん高くなり、その後はだんだん下がって、1年ほどでかなりの程度まで戻ることが報告されています。

この時間の流れは、とても大切な情報です。なぜなら、化学療法による神経への影響の多くが一時的なものであること――つまり、時間とともに回復に向かう可能性が高いことを、血液のデータという形で裏づけているからです。「ずっとこのままなのでは」と感じている方にこそ、知っておいていただきたい事実です。

睡眠と脳の「お掃除」の関係

もう一つ、新しい研究からわかってきた興味深い手がかりがあります。私たちの脳には、眠っている間に老廃物を洗い流す「お掃除」の仕組み(グリンパティック系眠っている間に脳の中の老廃物を洗い流す仕組みです。化学療法後はこの洗い流しのはたらきが弱まる可能性があり、しっかり眠ることでこの機能を助けることができます。と呼ばれます)が備わっています。ところが化学療法後には、この洗い流しのはたらきが弱まっている可能性が報告されました。

この仕組みは、主に睡眠中にいちばん活発に働くことがわかっています。つまり、しっかり眠ることは、脳の老廃物の片づけを助けることにつながります。後ほどお伝えする「睡眠を整えることの大切さ」が、こうした脳の仕組みの面からも裏づけられつつある、ということです。

意外かもしれませんが、変化は「治療の前」から始まっていることがあります

ここで、多くの方が驚かれる事実をお伝えします。ケモブレインというと「抗がん剤のせいで脳がダメージを受けた」とイメージされがちですが、研究を見ていくと、頭のはたらきの変化は化学療法を始める前から、すでに始まっている方が少なくないことがわかってきました。先ほどの神経のダメージの目印も、治療を始める前の時点で、すでにやや高くなっている方がいることが報告されています。

なぜでしょうか。理由はいくつか考えられています。がんそのものが体に炎症を引き起こすこと、診断を受けた衝撃や強い不安・眠れない夜が脳のはたらきに影響すること、手術や麻酔の影響なども関わると考えられています。

この事実には、心を少し軽くしてくれる面があります。「すべては抗がん剤のせいで、自分の脳が壊されてしまった」と感じている方にとって、実際にはがんという病気や、それに向き合う心身のストレスなど、さまざまな要素が重なって生じているとわかることは、過度な自責や恐怖をやわらげてくれるはずです。そして、不安や睡眠といった「治療前から関わっている要素」は、あとからでも手を打てる部分でもあるのです。

「検査で異常なし」と言われたとき――感じ方と検査結果のズレについて

患者さんの、「認知機能の検査を受けたけれど、異常なし。でも日常生活では明らかにおかしい」という経験は決して珍しいものではなく、多くの研究で繰り返し確認されている現象です。

このような、患者さん自身が感じる「頭のモヤモヤ」の強さと、認知機能検査記憶力や注意力、考える速度など、頭の働きを数値で測る検査です。静かな部屋で特定の課題に取り組みながら行われますが、日常生活での困難さと検査結果が一致しないことがあります。で測られる点数は、必ずしも一致しないこと。検査ではきちんと点が取れているのに、本人はとても困っている。あるいはその逆、とどちらのパターンもあります。

では、この「感じ方と検査結果のズレ」は何を意味するのでしょうか。患者さんが感じる頭のはたらきの低下は、検査の点数よりもむしろ、不安、気分の落ち込み、疲れ、睡眠の質といった要素と強く関係する傾向があることが示されています。強い疲れや気分の落ち込み、浅い眠りがあると、実際の力以上に「頭が働かない」という感覚が強まってしまうのです。

このように、認知機能検査が見ている部分と、患者さんが日常で困っている部分は、そもそも別のものなのです。検査は静かな部屋で一つの課題に集中して取り組むものですが、日常では、騒がしい台所で料理をしながら電話に出て、同時に家族の用事にも対応する――そんな複雑な状況が当たり前です。「検査で異常なし」は「問題なし」という意味ではなく、静かな条件のもとでは力が保たれているというだけのこと。検査の結果がどうであれ、生活の中で困っていることがあれば、それは対処すべき問題として受け止めてよいのだと、私は考えています。

治療の種類によって影響はどう違うのか

「ケモブレイン」という名前から化学療法だけの話と思われがちですが、乳がんの治療で使うホルモン療法(内分泌療法)女性ホルモンがんの増殖に利用されるのを防ぐ治療です。薬を飲んで女性ホルモンの作用を抑えたり、卵巣の機能を低下させたりして、再発を防ぎます。にも、頭のはたらきへの影響が報告されています。

興味深いのは、同じホルモン療法でも薬の種類で影響が違うという点です。タモキシフェン女性ホルモンを受け取る受け皿をふさぐ薬で、乳がんの再発予防に使われます。化学療法と同じくらいの脳への影響が報告されている場合があります。は、いくつかの研究で化学療法と同じくらいの影響が指摘されています。一方、アロマターゼ阻害薬女性ホルモンを作るのに必要な酵素をブロックする薬で、乳がんの再発予防に使われます。タモキシフェンと比べると脳への影響が比較的小さいとされています。(レトロゾール、アナストロゾールなど)は、比較的影響が小さい傾向があるという報告があります。ただし、これはあくまで集団としての傾向であり、人による差は大きいことも申し添えておきます。

化学療法による変化は、治療が終わってから1年から2年をかけて、少しずつ和らいでいく方が多いとされています。先ほどの血液の目印の変化とも一致する流れです。もちろん、一部の方ではもっと長く続くこともありますが、不安を感じている方には、「多くの場合は時間とともに回復に向かう」という見通しをお伝えするようにしています。

影響を受けやすい部分にも特徴があります。記憶や新しいことを覚える力、注意力や集中力、物事を素早く処理する力、そして段取りをつけて計画的に進める力は、比較的影響を受けやすいとされています。逆に、言葉を理解したり話したりする力や、ものの位置関係をつかむ力は、比較的保たれやすい傾向があります。「名前がなかなか出てこない」「段取りが悪くなった」と感じるのに、会話そのものはスムーズにできる――そんな患者さんの訴えは、この「部分によって影響が違う」という研究結果とよく一致しています。

症状が長引きやすいのは、どんな人か

すべての方に同じ程度のケモブレインが起こるわけではありません。これまでの知見から、症状が出やすい・長引きやすい傾向と関係する要素が、いくつかわかってきています。

まず、年齢が高いほど起こりやすいという報告が複数あります。これは、年齢とともに脳の「予備の力」(脳が多少のダメージを補う余力)が変わってくることが関係していると考えられています。また、治療を始める前から頭のはたらきがやや低めだった方や、不安・気分の落ち込みが強かった方は、治療後の症状も強く出やすい傾向があります。さらに、もともと体の炎症の値が高い方、睡眠に問題を抱えている方、強い倦怠感がある方も、ケモブレインが長引きやすいと指摘されています。

ここで大切なのは、これらの要素の中に「自分で手を打てるもの」が含まれている、という点です。年齢や治療前の状態は変えようがありませんが、睡眠の質を整えること、疲れを上手に管理すること、気分のケアに取り組むことはできます。「自分はリスクが高いかもしれない」とわかることは、悲観する材料ではありません。「では、どこに手を打てばよいか」を考える出発点になるのです。

👉日々の物忘れ・集中のコツはこちらケモブレインとは?物忘れ・集中への向き合い方

何が効くとわかってきたか――最新の研究から

では、具体的にどんな対処法に、科学的な根拠が積み上がってきているのでしょうか。ここでは、信頼性の高い研究方法である「ランダム化比較試験参加者を公平に二つの治療グループに分けて、本当に効果があるかを厳密に調べる研究方法です。医学的な根拠として最も信頼性が高い研究方法です。」(参加者を二つの群に分けて公平に比べる方法)の結果を中心にお伝えします。

有酸素運動――「点数」より「日々のしんどさ」に効く

まず、有酸素運動呼吸しながら行う運動で、早歩きなど少し息がはずむ程度の強さが目安です。脳への血流を増やし、炎症をしずめ、気分を整える効果があります。についてです。2025年に発表されたACTIVATE試験という研究は、化学療法中に有酸素運動のプログラムを始めた方々と、そうしなかった方々を比べたものです。結果はとても興味深いものでした。検査で測った点数には、両者の間にはっきりした差は出ませんでした。ところが、患者さん自身が感じる頭のはたらき――「すっきり感」や「日常の作業のしやすさ」といった主観的な評価は、運動をした方々で明らかに改善していたのです。

ここで、先ほどの「感じ方と検査結果のズレ」を思い出してください。日常生活で実際に困っているのは、まさにこの「感じ方」の部分です。ですから、ペーパーテストの点数が上がらなくても、「日々のしんどさが軽くなる」というのは、十分に意味のある効果なのです。有酸素運動は、脳への血流を増やし、神経の炎症をしずめ、気分を整えるはたらきが、複合的に働いていると考えられています。

運動といっても、激しいものである必要はありません。想定しているのは、早歩きのような、ほどよい強さの有酸素運動です。「少し息がはずむけれど、会話はできる」くらいが目安になります。ただし、治療中の体調や合併症によって、適した運動量は人それぞれ違います。始める前に必ず主治医にご相談ください。

認知リハビリ・脳のトレーニング

認知リハビリテーションコンピューターの脳トレプログラムや日常の困りごとへの対処法を学ぶプログラムなど、脳の働きを改善するための訓練や学習を指します。や脳のトレーニングも、研究が進んでいる分野です。これは、コンピューターを使った脳トレのプログラムや、日常の困りごとへの対処法を学ぶプログラムなどを指します。いくつかの研究で症状の軽減が報告されていますが、効果がどれくらい確かなのか、どんなプログラムがいちばん良いのかについては、まだ「これから研究が必要」とされている段階です。過度な期待は禁物ですが、選択肢の一つとして知っておく価値はあるでしょう。

ヨガや太極拳などの「体と心」をつなぐ運動

ヨガや太極拳といった、体の動きと呼吸・リラックスを組み合わせた運動も、生活の質(QOL)の改善との関係が複数の研究で報告されています。運動としての効果に加えて、ストレスをやわらげ、睡眠を整えることを通じて、間接的にケモブレインを和らげる可能性が考えられています。

ただし、これらの方法は、いずれも「やれば必ず治る」という特効薬ではありません。あくまで困りごとを和らげるための選択肢であり、根拠の強さもそれぞれ違います。有酸素運動は「感じ方の改善」について比較的しっかりした根拠がありますが、脳トレやヨガなどはまだ研究の途上です。こうした情報の根拠の「強い・弱い」を知ったうえで、ご自分に合うものを取り入れていただきたいと思います。

特効薬はまだありません

最後に、薬による治療について触れておきます。ケモブレインに対して、広く確立された飲み薬は、残念ながらいまのところありません。集中力を高める薬や認知症の薬など、いくつかの薬が研究で試されてきましたが、どれも「十分な効果が、繰り返し安定して確認できる」というところまでは至っていません。

この事実は、がっかりさせてしまうかもしれません。けれども逆に言えば、だからこそ睡眠・運動・疲労の管理・気分のケアという「自分で調整できる部分」にていねいに取り組むことが、いまもっとも理にかなった対処法だということです。一つひとつは地味に見えるかもしれません。でも、睡眠の質が上がれば疲れが軽くなり、疲れが軽くなれば気分が安定し、気分が安定すれば「頭が働かない」という感覚もやわらぐ――これらは互いにつながって、良い連鎖を生みます。

気になるときは、遠慮なく主治医に相談を

ケモブレインの多くは時間とともに和らいでいきますが、次のようなときは、ためらわずに主治医や看護師に伝えてください。車の運転中にぼんやりしてしまう、薬の飲み忘れが増えるなど、安全に関わる場面で困っているときは、とくに早めの相談をおすすめします。また、症状が日に日に強くなる、長く続いて生活に支障が出ている、あるいは強い気分の落ち込みや眠れない状態をともなっているときも、相談する意味があります。

「こんなことを話してもいいのだろうか」とためらう必要はありません。頭のはたらきの変化は、治療にともなう立派な相談ごとです。困りごとを具体的に伝えていただくほど、睡眠や気分のケアなど、一緒に手を打てることが見つかりやすくなります。

ケモブレインの研究は、この20年で大きく進みました。仕組みの解明が進み、血液の目印で経過を見守る試みも実用化に近づいています。いまはまだ特効薬こそありませんが、手を打てる要素への対処と、有酸素運動を中心とした薬に頼らない方法の組み合わせが、もっとも根拠のある現実的な進め方です。症状の出方には個人差がありますから、主治医と話し合いながら、自分に合った対処を一緒に組み立てていきましょう。それが、いまできる最善の一手です。

※ 本記事は情報提供を目的としており、医療行為の代替となるものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。
参考文献・出典
  1. 日本乳癌学会『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版』 jbcs.xsrv.jp
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「がんと心」 ganjoho.jp

※ 本記事は上記の公的機関・学会等の情報をもとに、慶應義塾大学医学部 乳腺外科 林田哲 教授が監修しています。最終確認:2026-06-16

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